112146人が本棚に入れています
本棚に追加
坂口と俺が顔を見合わせていると、ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あ。…どうしよう。私、授業が」
「ああ、大丈夫だから、行きなさい。
ねぼすけには目を覚ましたら教室に戻るように言うから」
塩谷先生に言われ、坂口は渋々出口に向かった。
よろしくお願いします、と頭を下げて、ベッドの方を気遣わしげに見てから、やっと保健室を出て行く。
「じゃ、自分も…」
「なんだ、お茶でも飲んで行けばいいのに」
そう言われて、俺は迷った。
5時限目はちょうど授業がないので、小テストの採点をしようと思っていたのだが、…それは家に持ち帰ってやれば済むことだ。
田辺と接触するなら、これが絶好のチャンスだと思った。
「それじゃ、お邪魔にならないよう、少しだけ…」
言いかけた時、ベッドの方から微かに唸り声のようなものが聞こえ、俺と塩谷先生は同時にそちらに顔を向けた。
先生が素早く反応し、ベッドに大股で近づく。
.
最初のコメントを投稿しよう!