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「田辺、足、痛むのか」
布団を大きく捲ると、田辺が膝を抱えて丸くなっている姿が現れ、俺はハッとした。
慌ててベッドの傍に駆け付ける。
「いや、大丈夫です…」
田辺は冷や汗を浮かべながら、歯をくいしばるようにして痛みに耐えていた。
塩谷先生が手早く、目隠しカーテンを引く。
その内側に入るべきかどうか迷っていると、
「春山くん、悪いが、脚の付け根のあたりを強めにさすってやってくれるかな」
「分かりました」
カーテンをきっちり閉めると、俺は指示通りベッドの反対側に回って、右脚の付け根を下に向かって摩った。
塩谷先生が膝の裏側と太腿を両手で挟むようにして、マッサージを始める。
「すみません…ほんと、すみません」
田辺は顔を辛そうに歪めながら、何度も何度も詫びていた。
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