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おもむろに携帯を握る腕を掴むと、佐久間が驚いたように自販機の陰から顔を出した。
「…何色だった?」
小声で言ってにっこり笑いかけると、佐久間の顔が一気に引きつり、とっさに腕を引っ込めようとする。
俺は素早くその手から携帯だけを引き抜いた。
「悪いけど、ちょっと中身、確認するよ」
データを開くと、ズーム機能まで駆使したスカートの中の画像が次々と出て来る。
「…何枚撮ってんの、これ」
俺は呆れながら、それを1枚ずつスクロールしていった。
その間、佐久間はバツが悪そうな顔でこちらの様子をチラチラと窺っている。
大きな身体の後ろでは、二人の2年生部員が、同じように小さくなっていた。
「…あの…。俺、退学ですか」
眉を下げ、そう言った佐久間の上目づかいは、お世辞にも可愛いとは言えなかった。
「退学かどうかは分からないけど、…一応、携帯は預からせてもらうよ。
…俺の判断で無罪放免にするわけにはいかないから」
がっくりと肩を落とす佐久間が少し可哀相に思えたが、自分のしたことの重大さを気付かせるためには、仕方がない。
「…こんな画像なら、エロ雑誌にいくらでも載ってるだろ。
なんでこんなことしたんだよ」
「……だって、…めちゃめちゃ、可愛かったんすもん…」
「だからって」
「いや、マジで。なんかこう、…むずむずとくすぐられるっていうか」
「……」
思わず見上げようとした自分をギリギリのところで律し、俺は軽く咳払いをして、佐久間の携帯を内ポケットに入れた。
「…これから、練習?」
「はい」
「…じゃ、練習終わったら、職員室に寄って。…学年主任から携帯を返してもらうように」
「…………はい」
佐久間は、おどおどした2年生部員を従え、すっかりなで肩に変形した身体をずるずると引きずるように歩いて行った。
3人の姿が見えなくなって、取り残された俺は、どうしたものか、その場に立って考え込んだ。
…上のボンヤリちゃんに、その場所が危ないってこと、教えておかないと、まずいよな。
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