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あの日、あの真夏のクソ暑い日。
これよりも前の事は忘れてしまったけれど、
ただこれだけは忘れもしない、
俺の全てが変わった日―――
「っ………てぇなあ……ガキが生意気に………」
首根っこを掴まれ壁に押し付けられた幼い俺は恐怖に震えた。
「………たす………けっ……………ヤダ……死にたく…………殺さないで!」
「ひひっ……自分が蒔いた種だろぉよぉ。とっとと逃げてりゃなあ……今は助かったかもしれねえな」
「い……まは………?」
「また来るよってこった。次は誰だろうなぁ。ああ……お前の妹は母親ソックリのいい女になりそうだぁ」
目の前のひょろ長いキモ男はニンマリと笑い俺を見下す。
最後の言葉にサァッと血の気が引いた。
「ふざけんなぁぁぁあぁぁぁぁッ!」
俺は噛み付くように吠えた。
暴れるも軽く抑えられる。
「大丈夫大丈夫」
「っ?!」
「君は今からお母さんを追いかけるんだから」
奴の左手に握られた光るもんが俺に向かって振り下ろされた。
その時、目の前が真っ白に弾けた。
「?!」
そこからは先は靄が掛かったようにあまり覚えていない。
朧げに覚えている事と言えば
偶然にも触れたカッターと
脅える様に逃げ、階段から無様にも転がり落ちるあいつと最期の言葉。
「………とんだ……バケモンがいた……も、んだぜ…………」
ああ、確かこの時に警察が入ってきて俺はぶっ倒れたんだ。
その後、目が覚めたのは
薬臭い白い部屋だった。
しばらく熱が出て下がらなかったらしい。
その時はすごく安心したのを覚えている。
けれど、そこからが怒涛の日々。
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