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家族は名を変え 住む場所を変え 人を変えた。 母は目覚めず、 父は仕事を理由に顔を見せなくなった。 親戚や祖父母の元へ行けば腫れ物のように扱われる。 ただ妹と弟には嫌な思いはしてほしくなかったから嫌な思いは全て俺が引き受けた。 そのうちに俺が歪んだ。 家族以外の他をばれぬように傷つけるのが愉しくてしかたがなかった。 ただそれはすぐに家族以外から自分以外に代わっていく。 だけど我に返れば なんてことをしたんだと後悔した。 そんな中、俺はやらかした。 内容は思い出したくもない。 だから俺は家を出た。 家族に向き合わずに逃げたんだ。 光が届かない水中にあった意識がいっきに浮上した。 「っぅあ…………ッ」 肺に空気が充満して思わず咳込む。 今のは………何だったんだ? 「………走馬灯。或いは君の後悔」 「っ!!!」 「君は悪くない」 「どうして………」 目の前にいたのは身体に黒い布を巻きつけた俺と同じ顔。 「そして今の君の行動も、悪くない」 彼はくつくつと笑う。 「よく一瞬の他愛ない会話を覚え、そして推理したよ。さすが俺」 「………自分で言うか?」 「だからこそ。……あとはあれか。君の固有能力を使えば弾の勢いも威力もゼロになるからな」 「……ああ」 「まあそれはいいんだ」 笑っていたが真面目な顔に変わった。 .
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