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「まずは君の疑問に答えよう」
「…………」
「何故自殺したはずなのに俺が消えないか、それはそのような誓約を掛けたから。成すべき事を終わらせるまで俺はこの世界に縛られる」
「それじゃあ……この世界の理なんてまるで無視じゃん」
「そう。だから君は歪んだ。君の歪みの受け皿である俺が拒んだからな」
「?!」
「んー……拒んだ、とは少し違うかもしれないね。本来なら歪みを限界まで受けた者は輪郭が消えて精神は陽へ還元される。それが成されなかったんだよ、君の場合は」
「あんたが俺に戻らなかったから俺はおかしくなったって言いたいのか?」
「そうだよ。そして君の空いたままの精神には君自信気がつかないうちに埋め合わせるように別の人格が生まれた。そいつの表面はそれまでとは変わらない。だが歪みを俺の代わりに受けている代わりに少しの刺激で破壊衝動が抑えきれない奴が生まれてしまった」
「え………」
なんで俺をそんなにまっすぐに見るんだ。
「そしてそいつは本来の人格を無意識に押し込んで成り代わった。前に君も、お友達がそうなったのを見ただろ? ………だから聞こう。今君はどちらだ?」
嫌な汗が背筋を伝う。
やめろ……あの名前を言うな。
「翔。この名で呼ばれるのに嫌悪を抱くならお前は黒だ。優」
「ッ?!」
「しかし皮肉だよ。破壊衝動を持つものが選んだ名が優とはね」
「………やめ……ろ………」
「やめないよ。戻ってこい、翔。君は悪くないんだ」
「やめろ! 来るな!」
「俺がお前を助ける。闇に溶けるな。己の闇に傾倒するな!」
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