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「ゆ………ん…………ちゃん…………………優……………」 微かに聴こえる声を手繰り寄せるようにして意識を覚醒させる。 「優ちゃん!」 「あ………ぅっ………」 目を開いて最初に見えたのは智海くん。 主体となったのは久々だったから上手く身体が動かせない。 「君は………全部知ってたのかな?」 彼は頷く。 そりゃな、鍵だしな。 「じゃあ改めて。はじめましてだね、翔としては」 「うん。………その感じだと………優ちゃんは消えたんだね」 「違うよ」 「えっ?」 「戻ったんだ。だから記憶も全てここにあるよ」 「そっか。………じゃあなんて呼べばいいかな?」 「そのままでいいよ。もうそれで通っちゃってるし」 「なんだそれ」 「ま、その反応は妥当だよね」 「少し意地悪だよ」 「あなただけでも知っていればそれでいい。オレは優が振る舞ってたようにやるだけ」 「それじゃあ君は翔じゃない」 「まあ元々曖昧だったからね」 「そうだったとしてもだよ」 それ以上オレは答えなかった。 「さて、さっき影が言うにはあまりあまり状況は良くないみたいだね」 「うん。え? まだ消えてないの?」 「なんかまだ消えれないらしい。所で王様に一計を案じてみようと思うんだ。手伝ってくれる? 智海くん」 そしてその通りに彼は動いてくれた。 オレも見ていたけど、いい友達だよ、優。 .
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