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蒼い空に浮かぶ雲。
今にも届きそうなくらいの距離に私はいる。
蒼い空が漣くんで、私は白い雲。
私たちも、空と雲のように仲良く寄り添っていられたのかな。
「海くんに見せたいものがあるの」
「見せたいもの?」
「うん」
また、いつものように屋上へ空を見上げていた。
ポケットに入っている携帯をギュッと握りしめながら、その携帯を彼の前へ差し出す。
「これ…」
「そう。私の大切な人。四ノ瀬漣くん。あなたによく似てるでしょ?」
私は、微笑みかけるように言った。
「俺とは違って優しそうな奴だな」
「うん。漣くんは、優しいよすごく。いつも私を支えてくれた。いつも私の側にいてくれた。当たり前の存在だった。でも、海くんが転校して来た時、こんな奇跡あるんだって思った。あまりに似すぎて、漣くんが帰って来たんじゃないかって。でも、海くんは海くんで、漣くんじゃなかった。今、思うとね、漣くんに感謝してるんだ」
「感謝?」
「うん。だって私、自分の足で歩くことしてなかった。それを漣くんは、私に教えてくれたんだ。だから、私は決めたの。自分の足で歩くって。漣くんと約束したから…」
もう、決めた。
私は振り向かない。
たとえ、苦しくても悲しくても助けを求めたりなんかしない。
「海くん!私が泣かないように見張ってて」
勢いよく立ち上がり、また空を見た。
息を吸い込むと、夏を感じる匂いがした。
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