もうひとりの…?

4/4
前へ
/27ページ
次へ
蒼い空に浮かぶ雲。 今にも届きそうなくらいの距離に私はいる。 蒼い空が漣くんで、私は白い雲。 私たちも、空と雲のように仲良く寄り添っていられたのかな。 「海くんに見せたいものがあるの」 「見せたいもの?」 「うん」 また、いつものように屋上へ空を見上げていた。 ポケットに入っている携帯をギュッと握りしめながら、その携帯を彼の前へ差し出す。 「これ…」 「そう。私の大切な人。四ノ瀬漣くん。あなたによく似てるでしょ?」 私は、微笑みかけるように言った。 「俺とは違って優しそうな奴だな」 「うん。漣くんは、優しいよすごく。いつも私を支えてくれた。いつも私の側にいてくれた。当たり前の存在だった。でも、海くんが転校して来た時、こんな奇跡あるんだって思った。あまりに似すぎて、漣くんが帰って来たんじゃないかって。でも、海くんは海くんで、漣くんじゃなかった。今、思うとね、漣くんに感謝してるんだ」 「感謝?」 「うん。だって私、自分の足で歩くことしてなかった。それを漣くんは、私に教えてくれたんだ。だから、私は決めたの。自分の足で歩くって。漣くんと約束したから…」 もう、決めた。 私は振り向かない。 たとえ、苦しくても悲しくても助けを求めたりなんかしない。 「海くん!私が泣かないように見張ってて」 勢いよく立ち上がり、また空を見た。 息を吸い込むと、夏を感じる匂いがした。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加