5人が本棚に入れています
本棚に追加
夏休み目前に控えたある日、私の元に一通の手紙が届く。
「…?誰からだろ」
宛先を確認するが、自分の名前しか記してなかった。
封を切り、中身を覗くと金属が擦るような音が聞こえた。
それを手にしてみると、ペアリングのひとつがネックレスとなっている。
そのリングは、私が漣くんにあげた物とよく似ていた。
まさかと思い、封筒の奥から紙を取り出す。
『日向舞様。
いかがお過ごしですか?漣がこの世を去ってから、早くも3ヶ月が経とうとしています。私も、最初はどんな反応を見せていいのかわからなかったよ。でも、悔やんでいても漣は幸せになれないと思って、私は精一杯生きることにしたよ。漣は、本当に君のことを大切に思っていたよ。家に帰れば君の話で持ち切りだった。君にお礼を言うよ。漣の笑顔をありがとう。連を支えてくれてありがとう。君は、今の人生を精一杯生きてほしい。これは、連からの願いでもあるんだ。長い文章になって済まない。君の幸せを心から祈っています。
四ノ瀬浩。』
それは、連くんのお父さんからのものだった。
こんなに私を思っててくれたの…?
その手紙を胸に抱えながら、私はずっと泣いていた。
翌日、笑顔でクラスメートに挨拶を投げかける。
昨日の手紙で揺れた自分をきっぱり捨てることが出来た。
「海くん、おはよう」
でも、海くんには言えなかった。
彼だけには知ってほしくない。
このことは、私の胸にしまっておく。
彼の存在は、私にとってとてつもなくかけがえのないものとなった。
連くん、ありがとう…。
彼はきっと微笑んで私を見守っているだろう。
冷たい風と蒼い空が、それを教えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!