彼の存在

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夏休み目前に控えたある日、私の元に一通の手紙が届く。 「…?誰からだろ」 宛先を確認するが、自分の名前しか記してなかった。 封を切り、中身を覗くと金属が擦るような音が聞こえた。 それを手にしてみると、ペアリングのひとつがネックレスとなっている。 そのリングは、私が漣くんにあげた物とよく似ていた。 まさかと思い、封筒の奥から紙を取り出す。 『日向舞様。 いかがお過ごしですか?漣がこの世を去ってから、早くも3ヶ月が経とうとしています。私も、最初はどんな反応を見せていいのかわからなかったよ。でも、悔やんでいても漣は幸せになれないと思って、私は精一杯生きることにしたよ。漣は、本当に君のことを大切に思っていたよ。家に帰れば君の話で持ち切りだった。君にお礼を言うよ。漣の笑顔をありがとう。連を支えてくれてありがとう。君は、今の人生を精一杯生きてほしい。これは、連からの願いでもあるんだ。長い文章になって済まない。君の幸せを心から祈っています。 四ノ瀬浩。』 それは、連くんのお父さんからのものだった。 こんなに私を思っててくれたの…? その手紙を胸に抱えながら、私はずっと泣いていた。 翌日、笑顔でクラスメートに挨拶を投げかける。 昨日の手紙で揺れた自分をきっぱり捨てることが出来た。 「海くん、おはよう」 でも、海くんには言えなかった。 彼だけには知ってほしくない。 このことは、私の胸にしまっておく。 彼の存在は、私にとってとてつもなくかけがえのないものとなった。 連くん、ありがとう…。 彼はきっと微笑んで私を見守っているだろう。 冷たい風と蒼い空が、それを教えてくれた。
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