彼の存在

3/3
前へ
/27ページ
次へ
あなたを忘れて何ヶ月が過ぎただろう。 私たちは、早くも始業式を迎えていた。 「起立、礼。ありがとうございました」 学級委員長のやる気のない挨拶でこの日は終わった。 「舞、今日暇?」 「ごめん。海くんと約束が…」 「そっか、わかったよ。また明日ね」 手をひらひらとさせて、千紗は教室を出て行った。 誰もいないのを確認して、私は教室を見回す。 本当はいけないことなのに、私の体は、自然と連くんの席へと向かっていた。 その机に伏せながら彼の温もりを思い出す。 「日向…?」 ふと私を呼ぶ声が。 振り向くと爽やかな笑顔が私を見つめていた。 「海くん…」 「そこ、あいつの席だったんだ」 海くんは、私の心簡単に読めちゃうんだね。 狡いよ。 私はまだ、あなたの心が読めない。 なにを思っているのかも。 「ごめん。ちょっと思い出しちゃった…」 「ばーか。無理に忘れることないって。お前が必要とした時、あいつを思い出せばいい」 そう言って海くんは、私をギュッと抱きしめた。 こうやって抱きしめられたの何回目だろう。 「ありがとう…。海くんは、海くんだよね」 揺れたりなんかしてごめん。 泣き虫でごめん。 謝ることばかりなのに、彼は私に優しくしてくれた。 彼の存在は、私にとって必要とするもの。 だから、絶対に手放してはならない。 後悔しないようにしっかりと抱きしめる…。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加