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あなたを忘れて何ヶ月が過ぎただろう。
私たちは、早くも始業式を迎えていた。
「起立、礼。ありがとうございました」
学級委員長のやる気のない挨拶でこの日は終わった。
「舞、今日暇?」
「ごめん。海くんと約束が…」
「そっか、わかったよ。また明日ね」
手をひらひらとさせて、千紗は教室を出て行った。
誰もいないのを確認して、私は教室を見回す。
本当はいけないことなのに、私の体は、自然と連くんの席へと向かっていた。
その机に伏せながら彼の温もりを思い出す。
「日向…?」
ふと私を呼ぶ声が。
振り向くと爽やかな笑顔が私を見つめていた。
「海くん…」
「そこ、あいつの席だったんだ」
海くんは、私の心簡単に読めちゃうんだね。
狡いよ。
私はまだ、あなたの心が読めない。
なにを思っているのかも。
「ごめん。ちょっと思い出しちゃった…」
「ばーか。無理に忘れることないって。お前が必要とした時、あいつを思い出せばいい」
そう言って海くんは、私をギュッと抱きしめた。
こうやって抱きしめられたの何回目だろう。
「ありがとう…。海くんは、海くんだよね」
揺れたりなんかしてごめん。
泣き虫でごめん。
謝ることばかりなのに、彼は私に優しくしてくれた。
彼の存在は、私にとって必要とするもの。
だから、絶対に手放してはならない。
後悔しないようにしっかりと抱きしめる…。
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