一生の誓い

1/4
前へ
/27ページ
次へ

一生の誓い

9月初旬。 私は、ある場所へ来ていた。 それは彼のお墓。 千紗と来て以来、行かないと決めていた。 だけど、彼にあることを伝える為にやって来た。 「漣くん。久しぶりだね。今日はちょっと言いたいことがあって来たの」 まだ暑さが残るこの日。 蒸発しないように水をかけていると、なんだか漣くんの声が聞こえた気がした。 それに応えるように私は、話を続けた。 「私ね、漣くんと出会えて本当によかったって思ってる。ずっとこの人と一緒にいるって。でも、もう一緒にいることは出来ないんだよね。だから私は、海くんと一緒にいるって決めたの。私を支えてくれてありがとう…」 そう言って私は、笑顔でその場を去った。 翌日、過去の記憶が消えたように私は振る舞った。 でも、完全に忘れたわけではない。 「日向、おはよう」 「おはよう」 いつものように挨拶を交わす。 「今日も暑いな」 「そうだね」 いつものように会話を交わす。 そんな当たり前な日々を私は、漣くんと過ごしていた。 彼以外の人と同じような空間にいることさえ、不思議だった。 でも、今思うとそれはただの偶然。 相手が漣くんなだけだった。 そう、誰でもよかったんだ。 漣くんより先に海くんと出会っていたなら、私は彼を一生愛していた。 けど今は、彼しかいない。 一番初めに出会った人は、私の元を去りました。 二番目に出会った人は、私の傍にいます。 彼が死んだとわかった時、私は声を殺して泣いた。 彼が漣くんに似てるとわかった時、私は彼を責めました。 私には、心に決めたことがある。 ずっと一緒にいると決めた人と一生幸せになるんだと―。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加