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一生の誓い
9月初旬。
私は、ある場所へ来ていた。
それは彼のお墓。
千紗と来て以来、行かないと決めていた。
だけど、彼にあることを伝える為にやって来た。
「漣くん。久しぶりだね。今日はちょっと言いたいことがあって来たの」
まだ暑さが残るこの日。
蒸発しないように水をかけていると、なんだか漣くんの声が聞こえた気がした。
それに応えるように私は、話を続けた。
「私ね、漣くんと出会えて本当によかったって思ってる。ずっとこの人と一緒にいるって。でも、もう一緒にいることは出来ないんだよね。だから私は、海くんと一緒にいるって決めたの。私を支えてくれてありがとう…」
そう言って私は、笑顔でその場を去った。
翌日、過去の記憶が消えたように私は振る舞った。
でも、完全に忘れたわけではない。
「日向、おはよう」
「おはよう」
いつものように挨拶を交わす。
「今日も暑いな」
「そうだね」
いつものように会話を交わす。
そんな当たり前な日々を私は、漣くんと過ごしていた。
彼以外の人と同じような空間にいることさえ、不思議だった。
でも、今思うとそれはただの偶然。
相手が漣くんなだけだった。
そう、誰でもよかったんだ。
漣くんより先に海くんと出会っていたなら、私は彼を一生愛していた。
けど今は、彼しかいない。
一番初めに出会った人は、私の元を去りました。
二番目に出会った人は、私の傍にいます。
彼が死んだとわかった時、私は声を殺して泣いた。
彼が漣くんに似てるとわかった時、私は彼を責めました。
私には、心に決めたことがある。
ずっと一緒にいると決めた人と一生幸せになるんだと―。
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