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私は、何を考えているんだろう。
自分のことさえわからなくなってしまった。
「日向…?」
海くんが優しく声をかけるが、今の私には通用しない。
もう、わけがわからない。
交差する漣くんの存在に、私はどうしても動揺を隠せない。
「ごめん。ちょっと色々考えちゃって…」
「うん。知ってるよ。日向が一番苦しんでいること。だから、俺はお前の傍にいちゃダメなんだ。お前がお前じゃなくなる」
海くんの言葉に、私は一言も返せなかった。
本当は言いたい。
そんなことないって。
でも体が自然とそれを拒否してた。
人を愛すことは、必ず誰かを傷つける。
私は、被害者なんかじゃない。
加害者だったんだ。
漣くんのことも沢山、傷つけて。
海くんのことも沢山、傷つけた。
「私は…どうしたら…」
玄関にうずくまり、声を殺して泣いた。
あれだけ誓ったのに心が揺らぐ。
私は、最低だ。
海くんを振り回しといて、最後には忘れられませんでしたってそんなの許されるわけがない。
海くんだってきっと思ってる。
あいつは最低な奴だって。
記憶というものはとてつもなく恐ろしい。
人を傷つけたり、人を狂わせたりする。
「ごめん。ごめんね…海くん」
今は、謝ることしかできない。
漣くんとの記憶は、一番鮮明だった。
だから余計かもしれない。
これからは、海くんとの記憶を沢山作って漣くんの記憶を消そう。
これしか方法はない。
沢山、迷った。
沢山、泣いた。
けどもう迷わない。
彼に想いを告げる為、家を飛び出した。
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