ひとつの夢

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ひとつの夢

「海くん、なにしてんの?」 「ん?これは…秘密だ」 「え~。気になる」 季節は、秋になり暖かい日を迎えた。 今日は、念願の秋休暇。 海くんの家でまったり中。 でも、海くんは私を相手にしてくれない。 なにか作っている模様。 「海くん、コンビニ行くけどなんかほしい物ある?」 「あー、お茶頼む」 「了解」 コンビニに足を運ぶと、いつもより空いていた。 頼まれた通り、お茶を選びレジへ急ぐ。 店員さんと世間話をしながら会計を済ませる。 「ただいまー」 扉を開けると、海くんの姿がない。 2階やリビング…キッチンと探してみたけれど、やはり見当たらない。 「ん…?」 さっきまで海くんが作っていた物が、完成してあった。 「これは…」 「日向?」 ビクッ―。 海くんの声に体が震える。 「どうした?」 「あ、なんでもない…!」 「もしかしてこれ、見た?」 ギクッ―。 出来立ての物を指差しながら、私にそう聞く。 咄嗟にごまかそうとしたが、言葉を詰まらせた。 「ごめん」 「いや、見られてもいいんだけど…」 「え?」 顔を赤くして、私をそっと見据えてから照れ臭く笑った。 「本当は、ちゃんとした場で渡したかったんだけど。これ、俺の気持ち。いつも傍にいてくれてありがとう」 そう言って海くんは、私の首にそっとそれをかける。 「海く~ん…!」 ギューッと海くんに抱き着いた。 もう、何もいらない。 海くんが傍にいてくれるだけでいい。 ほっぺに短いキスをした。 海くんはその不意に顔を赤らめた。 それを私は笑った。 ありがとう…大切にするね。
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