ひとつの夢

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午後7時―。 私は今、参考書と向き合っている。 秘書になると決めてから、図書館や本屋へ行って参考書とやらを探し買ってみた。 だが…、私の知識では既に手遅れだ。 「残…敗…」 なかなか頭が働かない。 トントン―。 「入るわよ。どう?進んでる?これ食べると頭働くわよ」 「ありがとう」 お母さんの言葉は、誰よりも誇らしかった。 その言葉に私は、諦めかけた参考書を読み進めた。 基本用語とか専門用語とか、なに言ってるかわかんないけど、後悔はしたくない。 やらないで後悔するより、やって後悔するほうがずっといい。 海くんが以前、私に言ったこと。 当たって砕けろってやつだ。 「先生…ちょっといいですか?」 「おお。なんだ?」 翌日、私は先生に秘書になりたいという夢を訴えた。 「秘書か…」 「はい。彼に誘われたんです。最初は、戸惑いました。でも、母が応援してくれたんです。先生…知ってましたか?両親の応援ってどんな人よりも誇らしいんですよ」 私は、笑顔でそう言ってみせた。 「そうか…。正直言うと、お前の成績ではギリギリってとこだが、お前がそこまで言うなら頑張ってみろ」 「はいっ!ありがとうございます」 私の夢が新たに加わった。 好きな人の隣にいられるもの。 そしてたくさんの人と出会ったこと。 ひとつの夢が私の心にパッと咲いた。
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