それぞれの未来

1/3
前へ
/27ページ
次へ

それぞれの未来

6ヶ月が過ぎ、私たちは高校を卒業した。 大切な仲間との別れ。 尊敬する先生との別れ。 どの別れも寂しい思い出なんかじゃなく、楽しい思い出。 「千帆、あんた泣きすぎ」 「だってえ~」 「あんたが会いたくなったら、会いに行く。メールだってするし、電話だってする。だから泣くな」 ポンポンと優しく千帆の頭を撫でてから、私は海くんの元へ向かった。 「海くん。卒業おめでとう」 「おう。日向もおめでとう」 卒業証書を抱えながら、懐かしい校舎を見て歩く。 「懐かしいね。あ、海くんは転校生だったね」 「そうだな。なんか俺もここの生徒で通ってたって感じするよ」 「海くんは、ここのれっきとした生徒だよ」 そうはにかんで見せる。 すると海くんも私に笑顔を見せた。 「あ、あそこ行こう」 海くんが何か思い出したように声を上げる。 「どこに?」 「いいから」 そう言って、海くんは私の手を引きどこかへ連れて行く。 そして連れて行かれること10分…。 「ここ…」 そこは、漣くんのお墓だった。 「卒業証書、渡さなくていいのか?」 「え?でも、そんなの…」 「俺が橘に頼んで貰っておいた」 ジワッと涙が溢れ出し、必死で拭う。 笑顔で証書を差し出す海くんにお礼を言って、漣くんの前にそっと置いた。 号泣する私に海くんは、優しく胸に引き寄せた。 神様―。 どうして私を泣かせるのですか?
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加