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それぞれの未来
6ヶ月が過ぎ、私たちは高校を卒業した。
大切な仲間との別れ。
尊敬する先生との別れ。
どの別れも寂しい思い出なんかじゃなく、楽しい思い出。
「千帆、あんた泣きすぎ」
「だってえ~」
「あんたが会いたくなったら、会いに行く。メールだってするし、電話だってする。だから泣くな」
ポンポンと優しく千帆の頭を撫でてから、私は海くんの元へ向かった。
「海くん。卒業おめでとう」
「おう。日向もおめでとう」
卒業証書を抱えながら、懐かしい校舎を見て歩く。
「懐かしいね。あ、海くんは転校生だったね」
「そうだな。なんか俺もここの生徒で通ってたって感じするよ」
「海くんは、ここのれっきとした生徒だよ」
そうはにかんで見せる。
すると海くんも私に笑顔を見せた。
「あ、あそこ行こう」
海くんが何か思い出したように声を上げる。
「どこに?」
「いいから」
そう言って、海くんは私の手を引きどこかへ連れて行く。
そして連れて行かれること10分…。
「ここ…」
そこは、漣くんのお墓だった。
「卒業証書、渡さなくていいのか?」
「え?でも、そんなの…」
「俺が橘に頼んで貰っておいた」
ジワッと涙が溢れ出し、必死で拭う。
笑顔で証書を差し出す海くんにお礼を言って、漣くんの前にそっと置いた。
号泣する私に海くんは、優しく胸に引き寄せた。
神様―。
どうして私を泣かせるのですか?
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