それぞれの未来

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10年後―。 「社長、次のスケジュールは、青山会長と食事会です」 「わかった。若菜くんに次の仕事の説明を頼む」 「わかりました。気をつけていってらっしゃいませ」 日向舞、28歳。 現在、一ノ瀬海社長の秘書を務めている。 「舞さん、ちょっといいですか?」 彼女の名前は、佐藤若菜。 新米社員だ。 私が彼の秘書になったのは、3年前。 厳しい試験や面接に見事合格し、晴れて秘書という仕事に希望を持てた。 「あの…、社長って彼女とかいるんですかね」 相変わらず、社長はモテます。 彼女の前に薬指を差し出し、微笑みながら…。 「結婚してます」 案の定、彼女は驚いている。 私と社長は、5年前に籍を入れた。 卒業式の後、私たちは結婚の約束をした。 そして現在。 「ただいまー」 「おかえり。今日も大変だったね」 「ああ…。すまない、今日は休むよ」 やはり社長というのは、ものすごく疲労感が漂っている。 どうにかして楽にしてあげたい。 なのに、手助けすることさえ出来ない自分に腹が立つ。 「ごめんね…。何も出来なくて…」 寝てる海くんの頭を撫でながら、そっと呟いた。 翌日、私は彼よりも早く出勤した。 彼に少しでも負担をかけない為に多少の仕事をこなそうとデスクに資料を広がせた。 袖を捲り、気合いを入れた。 眠気覚ましにとコーヒーを飲みながら、作業をテキパキと進める。 朝の光が社内を明るく染めた。
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