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もう一度…
時が経つのは早いものだ。
今日は、珍しく会社を休暇。
「舞、今日はどっか行こうか」
「うん」
何年ぶりのデートだろう。
夫婦という自覚は、はっきり言ってあまりない。
私たちは、まだきっと恋人同士でいたいだけ。
「私たち結婚してよかったのかな…」
「なんだよ、急に」
「海くんだってそう思ってるんじゃない?」
顔が…曇った。
「確かに、恋人同士の方が気を遣わないで楽だ。でも、俺はお前と結婚してよかったって思ってるよ」
「そう?それならいいの。でも、疲れた時は、疲れたって言っていいんだからね。あなたの辛い顔見るの嫌なの」
「わかった。ごめんな。そんな思いさせて…」
「全然。海くんのほうが辛いもん。あっ新しく出来た店だって。入ってみよっか」
それ以上、話したくなかった。
無理矢理話を変えて、わざと明るく言った。
きっと彼も同じことを思ったのだろう。
フッと笑って店の中へと足を運んだ。
恋人同士だった時の愛と、夫婦になった時の愛は、全くの別物。
価値観によっては、恋人時代のほうが愛がこもっていた。
でも夫婦のほうが愛がより深くなる。
別にどっちがふたりにとって正しいのかなんて関係ない。
ただ、楽しく幸せに過ごすことが一番の近道なのだと思う。
私には海くんがいれば十分幸せだから。
彼もそう思ってくれてるといいんだけどな~。
海くんの横顔は、あの時よりも何倍もかっこよく見えた。
あなたとこうしていれることが一番の幸せなんです。
「海くん、待ってよ~」
彼の後を追いながら、笑顔を崩さなかった。
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