もう一度…

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何万人という人間が住むこの街は、本当に広いものだ。 犬の散歩をしてる人もいれば、ひとりでブラブラ歩く人だっている。 私が思う世界は、みんな平等に生きて、誰ひとり寂しい思いをしない未来。 「どうした?」 「いや、生きてるんだなって」 「なんだそれ」 窓を眺めるだけでホッとする。 この世の人間が必死で協力しながら生きていることに驚嘆する。 改めて見つめ直すとなんだか不思議な気持ちだ。 「海くんは、思わないの?」 「どうだろ。確かに人間ってこうやって出来てるんだな。とかは、思うよ」 「そんなこと考えてるとさ、自然と力が抜けるっていうか、幸せになれるって実感するの」 また、窓を眺める。 「あ、お前にひとつ言っておく」 「ん?」 「あいつの墓参り、行ってやれよ?」 「え…」 「だから、大丈夫だって言ったろ?じゃないと俺が変な気持ちになる」 また、海くんの癖だ。 私が寂しそうな顔すると、いつも私をそう言って逃がそうとする。 「あいつって誰?私が一緒にいるのは海くんだよ。それに大丈夫なんて嘘、聞き飽きた」 「わかった。今を精一杯楽しもう」 「うん」 本当は、嘘。 一秒足りとも忘れたことなんてない。 でも、あなたを傷つけるのが怖い。 いつか漣くんのように、突然私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって。 それが怖くてたまらなかった。 でも、あなたは言った。 絶対、いなくならないって。 その言葉を私は信じて、あなたの前で笑っていられる。 私は、彼の一番でありたい―。
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