最愛の死

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漣くんが私の元からいなくなって、早くも一ヶ月が経とうとしていた。 私は、漣くんのことを勿論忘れてはいない。 忘れることなんて、一生無理だと思う。 漣くんを傷つけないように、私はいつもの日々を笑って過ごした。 「千紗、今日買い物付き合ってくれる?」 「うん。なに買うの?」 「漣くんとのペアリング。いつか一緒にしような、って約束したの」 雑誌のページを見ながら呟くように言った。 「舞、これとかいいんじゃない?」 「う~ん…。私は似合ってるけど漣くんには似合わないかも…」 なかなか、これ!という物が決まらなかった。 諦め気味にため息をついた時、私の前にふたつのリングが顔を覗かせた。 「千紗っ!!これ、これいい!」 私は興奮したように千紗を呼びつけた。 「あ、かわいい~。舞にも四ノ瀬くんにもピッタリだね」 ようやく気に入った物を見つけ、即購入。 その袋を受け取り、私たちは漣くんのいるお墓へと足を踏み入れた。 「漣くん。久しぶり」 「四ノ瀬くん。久しぶり」 私たちは、それぞれ挨拶を交わし例の箱から彼の指輪を取り出す。 お墓の前に座り、声をかける。 「漣くん、言ってたよね。いつか一緒にペアリングしような、って。それ、今日叶ったよ」 私は、小指に指輪をはめキラリと見せた。 「これで私たちは、ずっと一緒だね」 本当は、泣きたくなった。 会いたくて、会いたくてたまらなかった。 でも、泣かない。 だって漣くんと約束したんだもん。 だから、私は笑う。 私は大丈夫だよって。 でも、あんなことがありえるなんて私は知る良しもなかった。
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