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ねえ、漣くん…。
あなたは今、どこにいるの?
気がつくと私は、屋上に来ていた。
ここで漣くんと夢を語ったあの記憶は、今でも鮮明に覚えている。
「~♪」
漣くんがいつも歌っていた歌を口ずさみながら空の風を感じていた。
私も好きでよくハモってたっけ。
でも、もうそういうことも出来ないんだよね。
寂しさが込み上げてきた。
どうして神様は、漣くんを連れて行っちゃったの?
「お前、いつもここに来るのか?」
不意に声が聞こえ、肩をびくつかせる。
「え…?」
「すげえ思い出深そうな顔、してるから」
「うん。ここね、昼休みになると漣くんといつも来てた。未来の話したり、面白い話したり…。楽しかったな~」
私は、あれから沢山彼を責め続けた。
彼は一切、悪くないのに。
私が一方的に悪いのに。
だけど、彼は一言言った。
『漣って誰?俺は、一ノ瀬海だ』
それで、ハッとした。
漣くんは、漣くん。
彼は、彼ということがハッキリとわかった。
「ごめん」
「え?」
「あなたのこと、漣くんだなんて…」
私は、落ち着きを取り戻し、いつものトーンで謝った。
「いや、話はお前の友達から聞いた。その漣ってやつ、俺に似てるんだろ?」
「うん…。信じられないくらいよく似てる」
「でも、ひとつだけ言っておく。過去を引きずったって何も変わりやしない。だったら現実を見て、真っ直ぐ歩くんだ」
その言葉は、私の胸に重くのしかかった。
確かにそうだ。
漣くんのことをずっと想っていても、彼が帰ることはもうない。
でも、胸張って前に進むことが怖くなった。
当たり前だった時間は、信じられないくらいに呆気なく終わってしまった。
そんな虚しさも隠しつつ、私は海くんに笑いかけた。
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