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突然の事故
晴れた日の昼下がり。
私は漣くんと屋上にいた。
「今、何時だろう」
「昼ぐらいじゃね?」
時間がわからないくらいに時は流れていた。
「漣くんは、卒業したらどうする?」
「俺~?俺は…就職決まってる」
そう言われた途端、一気に寂しくなった。
漣くんの家柄は、代々継がれている桜木ビルの息子。
だから、そこに就職が決定している。
「舞は、どうすんの?」
「私は、まだ決まってない」
「夢とかないの?」
「夢?あるよ。人々を幸せにできる人間になること」
そう言ったら漣くんは、顔を歪めて笑った。
それに釣られて私も笑った。
帰り道、何だか妙な緊張感に襲われた。
「漣くん…」
「ん~?」
「漣くんは、私の前からいなくなったりしない?」
漣くんのシャツの袖を掴みながら静かにそう言った。
「いなくなんないよ…。絶対に約束する」
小指を絡ませながら、指切りげんまんをした。
漣くんの笑顔が好き。
漣くんの声が好き。
漣くんの顔が好き。
改めて、そう思った。
このまま時が止まってしまえばいい、そう思うけれど。
神様は意地悪だ。
星が輝く空の下で、ふたりのシルエットが重なった。
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