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日野、試衛館―――。
小さいながらも割と名の知れた剣術道場である。
トォオオオオオオオ!!!!!!
ダンッッ!!
「そこまでっ!次ぃっ!!」
道場の中から聞こえてくる勇ましい声を聞きながら。
オレはせっせと庭掃除に励んでいた。
武士になり、ゆくゆくは幕府に仕える。
そんな事を夢見る者、男に生まれたからには武道を身につけたい者・・・。
それぞれが想いを胸に日々鍛錬を重ねていた。
ほとんどは農民だったり、商家だったり、武士とは程遠い身分の人達の集まりだった。
一人の青年が道場から足早に庭へとやってきて、オレの横でピタリと歩みを止めた。
「チビ!水を汲めっ!」
無礼な一言にカチンときてサッと振り返ると、声の主を睨みつける。
「オレの名前は颯真(ソウマ)です!!」
何回言っても、この人はオレの名前を呼ばない。・・・頭にくる。
「分かったからさっさと汲んで来い、チビ!」
意地の悪い笑みを浮かべると、歳三(トシゾウ)さんは道場へと戻っていった。
「なんなんだよっ!門下生でもないクセに態度はデカいんだから!」
文句を言いながらしっかり水は汲む。
全く腹立たしいが年齢も立場も向こうの方が上だ。
「…はい、どうぞ。」
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