颯真と惣次郎~出会い~

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明後日の方向を見ながら渋々汲んだ水を手渡す。 「おお、早かったな」 バッシャアアアアアア!! ヒョイッと水の入った桶を受け取ると、歳三さんは気絶している門下生に水をぶっかけた。 「いつまで寝てやがんだ」 意識を取り戻した相手はせき込みながら飛び起き、すまなそうな顔で笑った。 門下じゃないけど歳三さんも、剣術の腕はかなりのものらしい。 あっちこっちの道場に飛び入りして、数々の試合を勝ち抜いてきたって聞いた。 色白で細い美男子(オレは違うと思う)なので見た目でナメられる事がある。 その場合は特に容赦なく、相手をブチのめすとか…。 子供のオレから見ても大人気ない。 試衛館の跡継ぎ、勝太(カツタ)さん=若先生と仲が良いから、特に此処に入り浸っては試合をしている。 「オレだってちゃんと稽古すれば―――!!」 ほうきを持ち上げて素振りの真似をしてみるが、上手くいかない。 オレは所詮内弟子だから、稽古よりも日々の雑用の方に時間を割かなければならない。
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