79人が本棚に入れています
本棚に追加
明後日の方向を見ながら渋々汲んだ水を手渡す。
「おお、早かったな」
バッシャアアアアアア!!
ヒョイッと水の入った桶を受け取ると、歳三さんは気絶している門下生に水をぶっかけた。
「いつまで寝てやがんだ」
意識を取り戻した相手はせき込みながら飛び起き、すまなそうな顔で笑った。
門下じゃないけど歳三さんも、剣術の腕はかなりのものらしい。
あっちこっちの道場に飛び入りして、数々の試合を勝ち抜いてきたって聞いた。
色白で細い美男子(オレは違うと思う)なので見た目でナメられる事がある。
その場合は特に容赦なく、相手をブチのめすとか…。
子供のオレから見ても大人気ない。
試衛館の跡継ぎ、勝太(カツタ)さん=若先生と仲が良いから、特に此処に入り浸っては試合をしている。
「オレだってちゃんと稽古すれば―――!!」
ほうきを持ち上げて素振りの真似をしてみるが、上手くいかない。
オレは所詮内弟子だから、稽古よりも日々の雑用の方に時間を割かなければならない。
最初のコメントを投稿しよう!