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「颯真、今日はアンタの他にもう一人内弟子が増えるからね」
みんなが食べた器をゴシゴシ洗っていると、おかみさんが嫌そうに告げた。
オレが来た時も、最初はあんまり良い顔をしなかった。
「只でさえ食いぶちが多いってのにあの人は何を考えてンだか!」
あの人ってのはこの道場の主で、おかみさんの旦那さん。勝太さんの養父だ。
正直この道場はギリギリご飯を食べれている状態だから、人が増えるのに反対なのも分かる。
「新しく来るやつはオレよりも小さいんですか?」
「いや、歳はアンタと一緒だよ。跡取りだったみたいだけど婿を迎えたから邪魔になったのかねぇ。こっちも大変だってのにさ。」
片付けが終わったら洗濯をするように言いつけると、溜め息を残しておかみさんはいなくなった。
「同じ歳、か。」
オレはいま九つだ。慣れてしまえば言われた仕事は、大抵こなせる。
…とはいっても、最初はかなりキツかった。
どんなヤツが来るんだろう…―――。
「あっ!そういや、洗濯だった!」
止まっていた手を動かし、片付けを終えると台所を後にした。
今日も大量に溜まっているだろうなぁ…。
みんなの汗だくの洗濯物を回収しに、オレは駆け出した。
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