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「うっわ……っ! くっせぇぇぇええ!!」
たっぷり汗が染み込み、放置され続けた衣類は、もはや凶器だ。
かといって鼻をつまんでは洗濯ができない。
洗濯が終わらない限りコレをかぎ続けなきゃならない・・。
毎度の事ながら洗濯の度に心が折れそうだった。
「・・・・・・はぁ~~っ、干した干したっ!」
重労働をやり遂げた後の達成感に浸る。
今日は天気が良いし、風も穏やかだからすぐ乾くだろう。
満足そうに洗濯物を眺めるオレの視界に、子供の姿が映った。
自分と同じか、もっと幼い感じの少年―――。
「あ。」
体格は小柄。クセっ毛をひっつまんでまとめましたと言わんばかりの頭。おでこ真ん中で綺麗に前髪が外側にハネている。
でも、どこか品の良さそうな顔立ちは、生まれもったものだろうか。
ヒラヒラと風に揺れる洗濯物を避けながら、少年に近づく。
少年は怯えながらも、逃げないで立っていた。
「もしかして、今日から来るのお前か?」
ビクビクしながら、しっかり目線を合わせると、
「・・・はぃ。今日からお世話になります。沖田惣次郎(ソウジロウ)です」
と名乗り、丁寧に礼をした。
「オレ、颯真ってんだ!よろしくなっ!!」
オレがニカッと笑うと、惣次郎も安堵の表情を浮かべる。
「じゃあ、おかみさんと先生ンとこに連れてくから、ついてこいよ」
オレが歩くのが早かったのか、チラッとみたら惣次郎の慌てて追いかけてくる姿が見えた。
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