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巳の刻(9時)……
ダダダダダダッ
「待てぇぇぇぇぇ 総司ィィィィ!
それ返せ!!」
「あははははは!
いやですよー。
それに、『待て』と言って待つ馬鹿はいません!」
朝、新撰組頓所にて、薄茶色の髪に白い肌、女性めいた美しい顔立ちの青年が帳面のような物を持ち、頓所内を走り回っていた。
彼の名は沖田総司。
新撰組一番隊隊長で、
新撰組一・二を争う剣豪だ。
その華奢な体つきからは想像できない……
その沖田を追いかけているのは長い黒髪を高く一つに束ね、白い肌に芸者顔負けの整った容姿の美丈夫…土方歳三だ。
彼は新撰組の副長で
『鬼の副長』と攘夷志士は勿論、隊士達からも恐れられている。
……まぁ、一部を除けばだが…
事の始まりは15分前、
沖田が土方の部屋に入り、彼がひそかに詠んでいる『豊玉発句集』と言う俳句集を盗んだのがきっかけだ。
正直、その内容はあまり上手いとは言えない……
沖田がそれを持って自分の部屋から出るのを土方が目撃した事により、この追いかけっこが始まったと言うわけだ。
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