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「材料が無いだけならまだ良い。だが飲み物まで無いってどういう事なの……」
青年は絶望した。
まさか飲み物という最後の砦まで崩れ去っていたなどと誰が想像できただろうか?
冷蔵庫の前で両手両膝をつき、打ちひしがれていた青年だが直ぐに一つの考えに至った。
材料が無ければ買いに行けばいいじゃない。
何故直ぐに思いつかなかったのだろう。
青年はすぐさま立ち上がり、財布を手に取る。
自分の考えの足りなさに内心呆れながら時計にふと目をやり……。
「ガッデム!!」
本日二度目となる魂の慟哭が部屋に響いた。
時刻は午後9時。
近所のスーパーはとっくの昔に閉店時間を過ぎていた。
即ち、本日のメインディッシュは一人暮らしの強い味方……コンビニ弁当になる事が確定した瞬間だった。
「この世にユメもキボーもありゃしねぇ……」
ブツブツと文句を垂れながら物資補給の為に準備をする。
とは言っても、自転車の鍵を取り出すだけなのだが。
愛車の鍵を手に取り渋々歩き出す。
玄関で靴を履いていると、不意に扉をノックする音が聞こえた。
こんな時間にいったい誰だろう。
そう思いながら扉を開くと。
「ヤッホー兄、晩御飯作りにきてあげたから感謝しながら土下座しな」
救いの神が降臨した。
「ありがとうございます」
青年は土下座した。
恥も外聞もかなぐり捨てて。
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