出立~旅立ちの鐘が鳴る~

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「まさか本当にやるとは思わなかったよ」 「だからってドン引きしなくても良いじゃないか……」 現在、青年達は一つの卓袱台を囲んで食事をとっていた。 心身共に疲れ果てていた青年にとって、少女の登場はまさに僥倖だった。 仕事で肉体的に疲労し、上司の小言と後輩の無礼な態度に精神的に疲弊した彼にとって少女はまさに救いの神と言える存在だった。 と、言っても彼等は恋人同士ではなく兄妹な訳だが……。 「兄は相変わらず寂しい生活を送ってるね。さっさと恋人でもつくればいいのに」 「余計なお世話じゃ。あ、醤油とってくれ」 妹の彼女つくれ発言を軽く受け流し、黙々と食事を口に運ぶ。 その様子を呆れながらみる少女の視線をさらにスルーしながら、ただひたすらに食べ続ける青年。 彼は、この手の話題……主に自分に関する事は徹底的に避ける傾向があった。 理由は彼の恋愛遍歴に起因するが……今は語るべきではないので割愛する。 彼女も理由を知っているのかこれ以上言うつもりは無いようで、溜息を吐きながら黙ってその様子を眺めていた。 「御馳走様。相変わらず流菜の飯は美味いな、良い嫁さんになる」 「褒めてもデザートしか出ないよ」 「出るんかい」 食事を終え、出されたデザートをつつきながら雑談に興じる。 暫く他愛のない会話を楽しんでいたが、少女は兄のPCに視線を移して口を開いた。 「兄、アレやっても良い?」 「構わんよ……すっかりハマったな」 了承を得た事で嬉々としてPCの前に座り込む我が妹の姿に苦笑しながら、青年は食後の一服を楽しむためにベランダに足を運んだ。
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