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ライバルを負かした優越感から生じた新たな決意は、深い欲望と共に彼女の胸に大きく刻み込まれていた。
それから程なくして、桂昌院は無事に江戸城へと入場。
幕臣や女中たちから手厚い歓迎を受けながら、その日の内に三の丸御殿へと入った。
「何とも懐かしき三の丸。まるで上様をご養育していた、若かりし頃に戻って参ったようじゃ」
桂昌院は御殿内の空気を吸い込みながら、思わず懐かしさに浸った。
改築によっていくらか内装は変わっていたが、床や柱、御殿の佇まいは昔のままだと桂昌院は大変満足した様子であった。
以後 桂昌院はこの三の丸を自らの居館とし、将軍生母として絶大な権力を振るうことになるのである。
めでたくご母堂が三の丸に君臨すると、いつかの言葉通り、お伝の方が本丸から退いて三の丸へと居を移して来た。
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