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「こなたも、そちを関東にやるのは辛いんや。叔母さんの一件もあるからなぁ」
「本理院…孝子様…」
小さく呻くように、小石君は大叔母の名を呟いた。
本理院・鷹司孝子は教平の父方の叔母にあたる人物であり、先の江戸幕府三代将軍・徳川家光の正室であった女性である。
「叔母さんは関東に冷遇され、それは辛い日々を強いられていたと聞く。父としては、そなたをその二の舞にはしとうないのや」
教平はグッと、手にしていた扇を握り締めた。
本理院孝子の話は小石君もよく知っている。
二代将軍・秀忠の5女・和子が後水尾天皇の女御として嫁したその返礼として、
左大臣(後に関白)・鷹司信房の姫であった孝子が、時の将軍・家光に輿入れたのである。
が、結婚当初から夫婦仲が悪く、暫くすると、孝子の住まいは本丸大奥から“ 中の丸御殿 ” へと移されてしまった。
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