7人が本棚に入れています
本棚に追加
「―――ふぅ……。」
手元の珈琲(微糖)に手を付ける。ほんのりとした苦味が口の中に広がり、気分が落ち着く。
『今回の事は―』『―残念だったね』『元気出して―』励ましの言葉、同情の言葉。ここ最近言われ続けた言葉。
いい加減"うんざり"だった。知ってる人間に会えば必ず言われて…確かに"普通"の家庭だと家族が一人居なくなった事は大きいのかもしれない。
だけど俺は会った事もない(少なくとも記憶の中では)、顔も知らない(写真でしか)、そんな人間が家族だと言われてもピンとこない訳で…。
(―それに、母さんの葬式にも顔を出さなかったし…。)
そんな親父が居なくなったからって大した感慨もなく、『あぁ、居なくなったんだ?』程度にしか思っていなかった。
ま、そんな事を正面切って他人に言うと『冷たいヤツ』だの『薄情者』だの『身内なのに―』だの非難を受けるのは目に見えている。その為、"事無かれ主義"の俺はここ数日愛想笑いの絶えない日々を送っていた。
最初のコメントを投稿しよう!