短編集

黄百合な時間

■梨奈目線

私には、
大好きな人がいる。

「ほら、そこ休まない！
　1,2！1,2！」

守川麻海先生。
5年間続けている
ダンス教室の先生だ。

小学生の時から始めて、
今では中学生。

中学生になったとはいえ、
年の差は10。
私は13歳、相手は23歳。
それに両方女。
叶わない恋なのは
わかってる。
でも、大好きなんだ。

先生の練習は見学して、
無視されるとわかっていても
｢お疲れ様です｣と声をかける。
先生は誰にも媚びない。
誰に対しても、
クールで、平等。
でも、私は違う。
私には特別冷たいんだ。
声をかけると、
そっけない返事をして
さっさと言ってしまう。

きっと先生は、
私が嫌いなんだろう。

それでも好きなのは
やめられない。
先生の、
細いくせに筋肉がある身体とか
少し色の薄い茶色の髪の毛とか
すっきりして聞き取りやすい声とか
踊るときの可愛い笑顔とか
全部全部大好きだから。