黄百合な時間

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「…お疲れ様。ありがと」 そういって タオルを受け取る先生 嘘 嘘 嘘っ 嘘っ!? 初めて返事してくれた 初めてタオルを 受け取ってくれた 嬉しい 嬉しい… 嬉しい…っ 嬉しすぎるっ!!! 「いえっ!麻海先生、  とってもかっこよかったです!」 嬉しくてうれしくて、 つい口が滑る。 だめだ、 調子に乗らないで。 嬉しそうな笑顔を見せたら、 気持ちが わかってしまうかもしれない。 そしたら、 もっと嫌われてしまう。 不快な思いをさせてしまうから。 「…ありがとね。  梨奈だって、可愛かったよ」 ふわりとほほ笑む先生 これは…夢? だって、 先生が私の名前を 呼ぶはずない だって、 先生が私を可愛いなんて 言うはずがない 「ぇ…?先生今なんて…」 聞き間違いかも知れない。 そう思って 聞き返そうと思ったら。 「梨ー奈っ!  可愛かったじゃーん!」 「あ、奏先生…」 麻海先生はその声に ハッとして楽屋へ戻っていった。 「あれ?邪魔しちゃった?」 「あ、いえ、大丈夫です…」 この教室の大先生に 「邪魔だった」など 言えるはずがない。 「今日はうまく踊れた?」 「ええ、まぁ…」 そんな感じの雑談を 少ししてから、別れた。 別れた後も、 心臓は高鳴っていた。 夢でもいい。 聞き間違いでも幻聴でも。 先生が名前を呼んでくれた 先生が可愛いと言ってくれた 先生が返事してくれた 先生がタオルを 受け取ってくれた 先生が笑ってくれた これ以上ないくらい、満足です 準備も終わり、帰る時。 「梨奈。」 「ふぇ?…あ、麻海先生!」 背後から名前を呼ばれて 振り返ると 居たのは麻海先生。 「…ちょっとおいで」 顔をそらしながら、 私の腕をとり、 早歩きで歩いていく。 なんだろう 先生が 腕を掴んで くれているのは 嬉しいけど 何言われるのかな 怒られるのかな 気持に気付かれたのかな なんだろう 怖い 怖いよ 連れてこられたのは、 人がまったく来ない 発表会をやったホールの 舞台裏。 「麻海先生…?」 止まっても、 手を離さずに 背を向けている先生。 「梨奈…ごめん」 「先生…?なに んっ」 腕を引っ張られる感覚が したと思ったら、 目の前には整った先生の顔。 唇にやわらかいものが 当たる感触 「…!?!?」 キス、されて…!?
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