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しばらく痛めつけた後、
足をどけた。
疲れたからね。
君はさっきもいだ
僕の手を使い、
起き上がろうとしている。
――僕の手をつき、
起き上がる君を
見ていたんだけど。
「…。」
ドンッ
『きゃっ!!』
――起き上がる前に、
押し倒して。
「…おい。」
「言え。僕が好きだろ?」
『え…?』
―バカか、僕は。
何を期待してるんだ…。
散々あんなことしてきた僕を、
君が好きになって
くれるんじゃないか、なんて。
無理に決まってるのに。
『う、うん…。
好き、だよ…?』
返ってきた返答は、
予想外すぎて。
いつの間にか、
涙があふれてた。
そんな涙を君が拭う。
『どうして、泣くの?
…えへへ、大丈夫だよ。
私、何されても
君のこと、好きだから』
…思い返せば、そうだった。
あの時も、あの時も。
僕を庇って、
いろいろと片付けてくれたんだ。
今の顔はきっと情けなくて、
見られたくなかったから、
立ち上がって、
君が起き上がるのを待った。
そうすると、
手をくいっ、と引っ張られた。
君が引っ張ってた。
――ひとつひとつ片付けて、
君を待つ僕の手を引こうとする。
君の意図が分かった瞬間、
僕はまた涙がでた。
「なんで…っ、
なんで僕なんかに
優しくしてくれんだよ…
なんで…っ、
僕を殺さず
自分が死のうとしてるんだよ…!」
『ばれちゃったか。
じゃぁもしかして、
アレもばれちゃってたり?』
「僕がここを出る時は、
君が、死んでてくれたんだろ…?
だから僕は
生きていられたんだろ…?」
『えへへ、せーかい。』
――ひとつづつでしか、
存在できない“僕”を
僕は殺した。
たくさんいた
“僕”を、殺した。
僕が生き残るために。
この部屋から出れるのは、1人だけ。
他は死なないと
いけないんだ。
それを君は知っていたから、
僕がいない時は
死んでいてくれたんだ。
生き返るためには、
いろんな代償が必要なのに。
それでも君は、
毎回僕を責めることなく、
ここで待っててくれてたんだ。
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