心壊サミット

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涙を拭いて、 君の手を取って、 立たせる。 ――君の手を引き、走り去る。 『えっ!?』 この部屋と外を繋ぐ、 【扉】まで。 「ねえ、ミク。」 「僕は、たくさんの“僕”の 生き残りでさ。 かっこよくもなくて、 バカだけど。」 『…うん、本当バカ』 「僕が生き残れたのは多分、 てゆーか、絶対。 君のおかげで、 僕は君の影。」 『違うよ、未来が私の影じゃない。 私が未来の影なんだよ』 「今まではそうだった。 でもこれからは、 僕が影になって、 君を支えるから!」 『…っうん…っ!』 「ずっと、そばにいるよ」 【扉】の前に着いて、 息を整えながら、 まっすぐ君の目を見る。 『こうやって、 目を見てくれたのは 初めてだね…』 「今まで、ミクから逃げてきた。 でも、これからは逃げないから。 ずっと、支えるから。 だから、一緒に生きよう。」 『…一緒に生きたい… 生きたいよ…! でも、無理だよ。 知ってるでしょ? “僕”はひとつずつでしか、 存在できないんだって。』 「…知ってる。 でも、僕は君と一緒に 生きたいんだ。 もしかしたら、 姿形がかわるかも知れない。 お互いのこと、 忘れちゃうかも知れない。 でも、でも!」 君と一緒に居たい。 そんな思いを伝えたいのに、 喉につっかえて出てこない。 それでも、 君に伝わってるって、 信じて見つめる。 『…うん。私も、 未来と一緒に居たい。』 「ミク…。ありがとう。 ありがとう…」 『じゃあ、行こう?』 「…うん。」 二人で重い扉をあける。 二人で行こうとしているためか、 いつもの【道】はなく、 闇しかない、 【空間】が広がっていた。 「『また、出会えますように』」 二人抱きしめ合いながら、 闇へと、姿を落としていった。 ――――――――――… 彼らの正体は「VOCALOID」。 未来と呼ばれた人は、 大人気アイドル「初音ミク」だった。 間もなくして、新しい 「VOCALOID」が発売された。 その名は………                   END
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