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弾んだ声を聞き付けた佳代が、表から土間に入って来た。
佳代も、しゃもじをつかむと、土鍋の中の液体をくるくると掻き回す。
「だいぶ、粘り気が出てきたわね。」
そういうと竃の火を消した。
小春は、そのねばねばしたぬるま湯の中に布を浸そうとする。
「外に出てからね。」
なみは、小春に声をかけると、佳代と二人で、土鍋を持ち上げた。
それから、鍋を空き地に据えると、箸を巧みに使って、白濁した湯の中から、赤紫色の刺々した海藻を取り出した。
布海苔である。
「はい、良いわよ。」
「うん。」
小春が布を土鍋に入れた。
表には、身の丈より高い立て板が、庵の壁に立てかけてある。
八重が、その板を壁から持ち上げ、地面の上に寝かした。
「もうそろそろ出して良いですよ。」
なみが、そう声をかけると、小春は、土鍋の中から布を取り出す。
「よいしょっと。」
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