草廬

5/21

242人が本棚に入れています
本棚に追加
/590ページ
「そうね、一から教えてあげますよ。」 「わあ!」 小春が、また甲高い歓声を上げた。 貧しい山中家では、新しい着物など、たとえ一生のうちでも、そう何度も仕立てることが出来ない。 ボロボロに擦り切れてしまうまで、何度も何度も仕立て直して着回すことになる。 ところが育ち盛りの小春は、毎年背丈が変わってしまうのだ。 けれど、新しい着物など、とても仕立ててあげられない。 それなら、 せめて綺麗に作り直した物を着させてあげたい なみは、そう思うのだ。 「さ、入りましょ。」 「うん!」 佳代が促し、皆が土間に足を向けた。 尼子勝久が、出雲国を脱出すると、佳代も一緒に行動してきた。 だが、一同が敦賀港から上陸すると、そこで皆と別れて、一路なみ達の庵を目指したのだ。 女子の一人旅は危険ですぞ 玄蕃は随分気を揉んだが、佳代は、元々鉢屋の末裔なのだ。
/590ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加