124人が本棚に入れています
本棚に追加
郁也は集まっている人達を見てどうしようかと頭を巡らせ悩んでいた時、ふと教卓の上の方を見上げました。
視線を上に向けたまま数秒固まり、次に困った顔は焦りへと一瞬で変化しました。
郁也が確認した時計の針は授業開始まで約5分前を指していたのです。
これでは頼まれた物を職員室に届けることができるかわかりません。
「あの、もう時間もないみたいだから俺だけ行ってくるよ。俺についてきたら授業に遅れちゃうし」
苦笑いでほんわかした空気を出して話す郁也に申し出を出来なくなって迫っていた生徒はおとなしく郁也に「わかった」と告げて自分の席に戻っていきました。
それを見届けて安心したように息を吐いてプリントを持って急ぎ足で教室を出ていきました。
この時からもう一人の人気者に出会うまでもう少し。
パタパタと走り、早く職員室に行こうと足を動かしている郁也は必死に職員室に向かっていました。教室から職員室まで4分くらい。
間に合うか間に合わないかどちらになるかわからない中、頼まれたことの責任感に郁也の焦りは増すのです。
急いで行っていたことで職員室にはギリギリで間に合いました。
けれど、先生に渡した瞬間に授業始まりのチャイムが鳴ってしまい郁也は内心肩を落としました。
息を切らしている郁也を見て、先生は疲れたからと飴を二つぶくれました。
手の中で転がる飴玉を見て何だか得をしたような気分になった郁也は小さく微笑んで先生に礼を言った。先生はそんな郁也を見て頭を撫でました。
職員室から出た郁也は授業が始まってしまったことにどうしようかと悩み、ここは一つといつかしてみたかったことをすることにしたのです。
最初のコメントを投稿しよう!