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意味が分からなくて困惑し、じっと見てくる金髪に自然に頬が緩んで吹き出してしまった。
「ぷっ、………ふは」
「?」
何で笑われたかわからないんだろう。いっそう哀しげに瞳が揺れた。
それを見てまたポンポンと軽く叩いた。
「あんた、可愛いな」
犬みたいで。後に小さくポツリと言った言葉は聞こえたみたいでギョッと目を丸々と大きくした後、ガバッと顔を隠してしゃがみこんだ。
「うぅ゛~」
上から見下ろせば真っ赤になっている耳と肌がよくわかる。
本当に可愛い。どうしようか、マジで。可愛いすぎんですけど、反則でしょっ!
自分の中で男前の男に可愛いと思った感情に下でしゃがみこんでいる男とは違った意味で悶えた。
これは姉が前言っていた不良ワンコか?予想外にときめいてしまった………。
表情では表さず内なる感情を収めて男の顔が見えるように俺もしゃがんだ。
「なぁ」
ビクッと小さく揺れた肩を見てそっと掴み手を顔から剥がさせた。以外にもあまり力が入っていなかった手は案外簡単に外れた。
隠すものがなくなった顔は真っ赤でした。俺もつられて赤くなってしまいそうなくらい。
「顔、あげて」
よく見えないから。
数秒おいて上がった顔はまだほんのりと赤く、でもしっかり瞳は合わさった。
目はちょっと潤んで濡れていた。余程恥ずかしかったのか。
「いいよ。あんたが本気なら」
「え?」
「今のあんた見て気がかわった」
「本当か?」
「ん」
泣きそうな顔は一変にパァっと明るくなり控えめな笑みを浮かべた。目じりに溜まった涙が気になって拭おうか拭わまいか迷った末に手を伸ばして優しく擦った。
ポカーンとした顔をした金髪にまた笑いが漏れてしまった。
「じゃ、手始めに名前を教えてくれないか?」
「~~~~~っ、市原樂(イチハララク)」
周りでワッと広がる歓喜の叫びを耳で感じながら暫し、この照れて俯いている大きなワンコの観察をしようと口元を緩めた。
‐END‐
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