124人が本棚に入れています
本棚に追加
高校の入学式。
俺は住んでいたところからかなり遠く、山の中にある男子校に入学する。
桜が満開に咲き誇るって風情がいい。風に乗って落ちてくる桜にほぅ、とため息をついた。
桜が舞っている中、俺と同じような今日入学を迎える新入生があちらこちらで楽しげに談笑してる。
この高校は幼稚舎から大学まで一貫って聞いたから殆どが顔見知りなんだろうけど。
俺には知り合いいないし、今はこの見事な桜を満喫しますか。
ほんわりと柔らかい風に薄ら笑みを浮かべ大きな桜の木の元にゆったり歩いていく。
周りでは騒ついているけどそんなこときにしない。
吸い寄せられるように脚は向かってしまうのだ。
「すげえ、綺麗…」
近づくとより美しい。
桜の優しい匂いが体を巡ってほんの少し無意識に力が入っていたのが抜けていく。
「あ、君。新入生でしょ?新入生はこっちにきて胸に花を付けてもらお」
心地よい気分で浸っていると背後からまだ声変わりしてないような高い声が聞こえた。
俺にかな?
ゆっくり後ろを振り返ったら俺の首あたりの身長のかわいい子がいた。
かわいい子っていってもズボン履いてるから男だけど。
じっと見てくるかわいい男の子はにこりと笑みを浮かべている。
「まだ花つけてないでしょ?」
「はい……」
先輩なんだろうか?
なら行こうと、手を握ってきたのに目を見開いた俺を気にもとめずに名前の知らない先輩?は手を引いて歩きだす。
「せ、先輩?」
「ん?あそこだよ」
ほらほら、と指をさしている所には一列になって並んでいる新入生が二ヶ所に別れて受付みたいなとこで在校生に花を付けてもらっているのが見えた。
「並ぼうね」
「はい」
近づいていくと引っ張り前を歩いていた先輩が横にきてただ手を繋いでいる、そんな感じに。
「お、矢野!新入生か?」
「そうだよ」
「いい感じの奴だな」
「柳井もそう思う?背も高いし悪くないよね」
声をかけてきたのは隣にいる先輩の知り合いなんだろう。仲が良さげだ。
だけど先輩、いつまで手を繋いでるんですか………。
「早速仲良くなったのか?手まで繋いじゃって」
最初のコメントを投稿しよう!