2章 嫉妬

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  《ダングレスト》 ヴェル「…………。」 ヘラクレスの砲台の影で夜を待っていた。 評議員であると同時に執政官であったラゴウと紅の絆傭兵団の首領、バルボスの企みが失敗に終わったのだ。 もっとも、2人はアレクセイに利用されていたこと知らなかっただろう。 バルボスはガスファロストで自害、ラゴウは評議会の立場を利用して、罪を軽くした。どうやら少し地位が低くなるだけですまされるらしい。 ヴェル「……ばかばかしい。」 ラゴウはもう生かされないと言うのに。と言う言葉を飲み込み、ヴェルは呟いた。 服装は既に貴族を殺した時の装束に身をつつんでいるが、もう空も薄暗くなっているので誰も気付かないだろう。 ヴェル「……はぁ。」 黄昏の空はほぼ消えかけてきて暗くなる空を見ながら、ヴェルは憂鬱な気分でいた。 ダングレストに着いて、アレクセイに『皇帝候補のエステリーゼ様を見張るように』言われて見張っているまではよかった。 その後、予想外の人物が現れた。 帝国騎士団隊長首席シュヴァーン・オルトレイン―否、天を射る矢の幹部のレイヴンが彼女達に接触してきたのだ。 その前にも接触したらしく、いろいろと話をしていて、共に行動していたのだ。 接触は多分、アレクセイに命じられたのだろう。 しかし、ヴェルの心を揺さぶったのはそれではなかった。 その時の表情がおどけているなかに、 昔の面影が重なったのだ。  
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