不機嫌なあの子

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「おいおい、赤くなるんじゃない」 身の危険を感じてか、中村は顔を引き攣らせて1歩後退った。 「なんで逃げるんですか、先生。先生が僕をその気にさせたのにっ!」 俺が更にふざけて席を立ち言うと、教室にどっと笑いが湧いた。 「あー、もう……勝手に言ってろ」 中村は疲れた顔で頭を抱え、もう一度深い溜め息を漏らすと、教科書を持つ手で払いのける素振りをしてみせ、教壇へと戻って言った。 呆気なく退散した中村をつまらなく思って唇を尖らせながら、椅子の背もたれに体重を預けるように腰を下ろして窓の外にふと目を向ける。 グラウンドでは体育の授業が行われていて、さっきから高らかな笛の音が何度か聞こえていた。  
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