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……何それ、不意打ち。
可愛すぎるし。
あぁ、離さなきゃ良かった。
そんな風に悶々としているうちに、彼女は制服のスカートを翻して、早々と屋上のドアを押し開けた。
傾き始めた陽の黄みがかった光が、薄暗かった踊り場に充満する。
まるで、俺の渇いた心に温かいものが染み込んだみたいに。
“大好きだよ”
喉まで出かかった言葉を必死に飲み込む。
例えその言葉を口にしたところで、彼女は足を止めてはくれないと知っているから。
触れても、抱き締めても、伝えても、彼女の心は揺るがないから。
苦しい。
切ない。
涙が出そうになる。
彼女が誰を好きでもいいと思っていた筈のに。
恋する感覚を楽しめたら、それで良かったのに。
次から次へと、欲が溢れてくる。
俺を好きになってよ、って。
あぁ、この苦しさを消し去って、何てことないと笑えるように……
誰か、特効薬、ください。
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