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「そっ。ならいいけど」
俺の本音を見定めるように冷たい瞳が射抜くから、妙に緊張して直立不動になる。
そんな俺に呆れたのか諦めたのか、清吾は瞼を伏せ、くるりとその身を翻して背を向けた。
「……あ、そうだ」
自分の部屋へと戻っていき、既に姿が見えなくなっていた清吾は、ドアの影からひょっこりと反り返らせた上半身を覗かせた。
「明日、帰って来ないで」
「えぇっ!?」
可愛い弟のおねだりなら……なんて快く頷ける筈もなく、悲鳴に似た声を上げる。
「ななな、なんでっ!お兄ちゃんの事が嫌い!?」
「え。なに、今更」
今にも飛び掛かるような勢いで尋ねれば、清吾はきょとんとした顔でそう答えた。
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