恋の痛み

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「たっだいまーっ!」 そして出た答えは、『面白そうだし、邪魔しちゃえ』なんてイタズラ心で。 お取り込み中だとさすがに申し訳ないので、なるべく大きく、陽気な声を上げて、勢いよく玄関のドアを開けた。 「わっ、びっくりした」 すると次の瞬間、小さな一驚の声と共に見覚えある姿が視界に飛び込んできたから、俺は大きく目を見開いて固まってしまった。 「げっ……」 なんの予告もなしに突然開いたドアに対して、反射的に体を竦めていたその人物は、俺を認識した途端、更に身を縮めて思い切り顔を歪めた。 「あはは、ひっどい顔」 瞬時にほぼ別物と化したあまりにも険しい顔と、彼女らしいその反応に、この状況の説明を問うよりも先に、そう失笑してしまう。  
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