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「大体っ!みちるちゃんが好きなのはあの宇佐美って奴で……」
勢い余って、言ってはならない事を言ってしまった。
なんて、すぐさま後悔した瞬間。
「呼んだ?」
清吾の背後から聞こえた気怠そうな声と、のっそりと現れた人影に、ギクリと肩を竦めてその場に凍りつく。
視線だけをそろりと上げ、その主を盗み見て、それが間違いなく宇佐美本人だと確かめると、いよいよさーっと血の気が引いた。
気まずい沈黙の中に漂ってくる激しい怒りの空気。
それがどこから来てるのかなんて、わざわざ探さなくたって分かる。
恐る恐るその発信源に目を遣れば、顔を真っ赤に染め、薄っすらと涙目のみちるちゃんが、唇を思い切り噛み締めてひたすら俺を睨んでいた。
憎くて仕方がないとばかりに、そして責めるように。
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