恋の痛み

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「……っ、馬っ鹿じゃないのっ!?ほんっと、馬鹿っ!!」 それしか言い様がないとばかりに、繰り返し蔑む怒号と共に一思いに脛を蹴って、みちるちゃんは家を飛び出してしまった。 「あ……みちるちゃんっ!!」 「……馬鹿右京」 上半身を捻り、その姿を追い掛ける俺の後ろで、清吾が溜め息混じりに呟く。 自分自身に呆れ、よーく実感しているけれど、改めて言われたそれは抉るように心に突き刺さった。 「なぁ、俺が何?」 そんな重苦しい空気の中で、状況を飲み込めていない宇佐美が呑気に尋ねてくる。 「お前じゃない、ウサギの話」 「あぁ」 清吾の適当な誤魔化し方と、それで納得する宇佐美にお門違いな苛立ちを覚えながら、慌てて彼女の後を追い掛けた。  
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