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「……」
彼女は何の反応も示さずに、射抜くような視線だけをただまっすぐこちらへ向けた。
思わず逸らしたくなるけれど、それでもしっかりと見返す。
彼女は決して口にはしないけれど、この眼差しこそが俺を詰り責めていると分かるから、ここで逸らすわけにはいかなくて。
「……君の想いは君だけのものなのに、勝手に口にしたりして、ごめん」
そう頭を下げると、彼女は怒りを抑え込むような重苦しい嘆息を漏らして体を翻した。
「今ここで、あんたを責めたところで何も変わらないもの。でも……もうこれ以上、私に構わないで」
怒りをぶつけられる方がどんなに良かっただろう。
どんな酷い言葉だって、甘んじて受け取るのに。
彼女はそれさえも俺に許してはくれない。
完全に拒まれてしまったのだ。
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