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「みちる」
それにしても、この男は毎回毎回、なんともいいタイミングで現れてくれる。
そうして易々と俺の立ちたい場所に立って、まるで見せ付けるみたいに、目の前でまた彼女の心を奪っていくんだ。
「何怒ってんの」
宇佐美は俺なんて居ないもののように後ろから追い越して横を通り過ぎ、彼女の前に立ち塞がってその表情を覗き込んだ。
「……別に、怒ってなんか」
返した言葉に反してむくれた顔を、彼女はふいと横に背けた。
宇佐美はそんな彼女の頬を両手で包んだと思うと、無理矢理正面へ向き直らせ、更に彼女の顔を押しはさんで潰した。
「ちょっ、何するのよ!」
頬が解放された途端、彼女は怒りを滲ませた顔を赤くしながら、宇佐美の胸板を小突く。
その一方で宇佐美はハハッと無邪気に笑った。
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