恋の痛み

19/45
前へ
/263ページ
次へ
  「……百面相」 クッションを抱き締めながら膝を立て、リビングのソファにちょこんと座る俺を見て、清吾がぼそりと呟いた。 「へっ」 素っ頓狂な声を上げて見返せば、凍えそうに冷たい眼差しが降り注ぐ。 「さっきから、難しい顔してたかと思えば泣きそうになったり、いきなりニヤニヤし出したり。最初は面白かったけど、そろそろ飽きてきたし、気持ち悪い」 無自覚だった百面相の事実と、あんまりな言われように少しばかりショックを受ける。 「……前に」 リビングを出ていこうする清吾が、ぴたりとその足を止め、呟く。 顔を上げ、続きを問うように視線をそちらへ向けた。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14261人が本棚に入れています
本棚に追加