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「……百面相」
クッションを抱き締めながら膝を立て、リビングのソファにちょこんと座る俺を見て、清吾がぼそりと呟いた。
「へっ」
素っ頓狂な声を上げて見返せば、凍えそうに冷たい眼差しが降り注ぐ。
「さっきから、難しい顔してたかと思えば泣きそうになったり、いきなりニヤニヤし出したり。最初は面白かったけど、そろそろ飽きてきたし、気持ち悪い」
無自覚だった百面相の事実と、あんまりな言われように少しばかりショックを受ける。
「……前に」
リビングを出ていこうする清吾が、ぴたりとその足を止め、呟く。
顔を上げ、続きを問うように視線をそちらへ向けた。
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